胃がんは胃の壁の内側をおおっている粘膜から発生するがんです。以前から日本人には胃がんが多いことが知られていました。その原因については長らく議論されてきましたが、現在、胃がんの最大の危険因子はヘリコバクター・ピロリ菌(以下ピロリ菌)という、胃に住み着く菌であることがわかっています。この菌が胃にいると胃炎が起こり、その一部の方に発がんを引き起こすとされています。
胃がんにはどのような症状があるのでしょうか。早期の間はほとんどが無症状です。進行すると、みぞおちの痛みや不快感、吐き気や食欲低下をきたします。また、がんから出血して吐血や下血(黒い便あるいは血便)を起こすこともあります。
胃がんは胃カメラで診断することができます。胃がんにはいろいろな見た目があり、進行した胃がんは、あきらかにまわりの粘膜とは異なる“できもの”として観察されることが多いです。スキルス胃がんと呼ばれる、胃が硬くなって広がらなくなるタイプのものもあります。一方で早期の胃がんは、わずかな凹凸や、色調の違いでしか認識できないものが多いです。病変から組織を採取して、顕微鏡の検査で診断を確定します。
胃がんの治療は、進み具合(ステージ)とお体の状態により総合的に検討されます。早期の段階であれば内視鏡での治療が可能な場合もありますが、このためには無症状のうちにがんを発見することが必要となってきます。胃がんは早期に発見すれば、治癒がのぞめる病気です。市町村の胃がん検診は40-50代からが対象となることが多いですが、それより若年で発症される方もおられます。胃がんができる方の99%が、ピロリ菌がいる、もしくはいた方であることが知られています。これまで胃カメラやピロリ菌の検査をされたことがない方は、一度ご自分の胃の状態を評価してみませんか。
ピロリ菌の除菌治療により胃がんのリスクが1/3になったという報告があります。しかしこの結果からもおわかりのように、ピロリ菌を除菌したら、もう胃がんにならないというわけではありません。除菌した後も定期的に胃カメラを受けていただくことが大切です。