過敏性腸症候群は腸に腫瘍や炎症などの原因となる疾患がないにも関わらず、腹痛や便秘、下痢などの症状が続く状態をいいます。正確には、6か月以上前から、腹痛が最近3か月の間の1週間につき少なくとも1日以上を占め、①排便に関連する ➁排便頻度の変化に関連する ③便形状(外観)の変化に関連する、のうち2項目以上の特徴を示す、が診断基準になります。日本人のおよそ1割がこの疾患であるとも言われている、頻度の高い疾患です。男性よりも女性に多く、お若い方に多いとされています。
過敏性腸症候群はどうして起こるのでしょうか。小腸や大腸は脳と連携し、消化吸収や排泄に関わっていますが、ストレスや不安による影響でこの連携がうまくいかず、腸の運動が変化したり、知覚過敏になってしまうことが原因の一つと考えられています。また、細菌やウイルスによる感染性腸炎にかかって、回復した後に発症する方もおられます。炎症で腸の粘膜が弱ることや、腸内細菌の環境が変わることがその一因と推測されています。
診断としては、まずは原因となる他の疾患がないことの確認をすることです。大腸カメラや、血液検査、必要に応じて便検査やレントゲン、CT検査などをおこない、大腸がんや炎症性腸疾患を除外することが必要です。血便や発熱、体重減少などをともなう場合、50歳を過ぎてからこういった症状をきたすようになった場合や、過去に腸のご病気をされたことがある場合は、とりわけ早めにお調べしたほうがよいでしょう。
過敏性腸症候群は腹痛やおなかの張りとともに、便秘になる場合、下痢になる場合、あるいは便秘と下痢を繰り返す場合など様々な症状があり、便秘型・下痢型・混合型・分類不能型の4つのタイプに分けられます。まずは、規則正しい生活を心がけ、それでも症状が残る場合は、それぞれのタイプに応じてお薬を調整していくことになります。適度な運動も症状の改善に有効とされています。ご年齢とともに徐々に症状が軽快していく方が多いようです。
過敏性腸症候群は日常生活に支障をきたし、QOLを低下させる疾患です。このようなご症状にお困りの方は、お気軽にご相談いただければと思います。