機能性ディスペプシアというのは症状の原因となるあきらかな異常がないにも関わらず、慢性的に心窩部痛や胃もたれなどの腹部症状を呈する状態のことをいいます。ディスペプシアというのは胃の痛みやもたれなどの不快な症状を指すギリシア語由来の言葉です。比較的新しい病名で、かつては慢性胃炎や神経性胃炎と呼ばれていました。
機能性ディスペプシアは日本人の1割が罹患しているとされている、頻度の高い疾患です。さまざまな原因が推測されていますが、胃・十二指腸の運動の異常や知覚過敏、胃酸の影響、ストレスや生活習慣などが単独あるいは複数で影響して、症状を呈すると考えられています。また、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染もその一因とされています。
症状としては、食後の胃もたれや食べ始めてすぐに満腹感を感じる早期飽満感、みぞおちの痛みや焼ける感じがあります。前者を主とする場合は食後愁訴症候群、後者を主とする場合は心窩部痛症候群と呼ばれますが、両方の症状を有する方もおられます。
機能性ディスペプシアは“症状の原因となるあきらかな異常がない”が定義ですので、胃や十二指腸の疾患、およびその他の疾患も除外することが必要です。まずはその他の疾患の除外のため、胃カメラやピロリ菌の検査、必要に応じて血液検査や腹部超音波検査、CT検査などをおこないます。ピロリ菌の感染がある場合は、除菌治療により症状の改善が得られる場合があります。
治療としては、生活習慣で改善できることを相談するとともに、内服薬での治療をおこなうことが多いです。胃腸の運動を改善するような薬や、胃酸を抑える薬がよく用いられますが、これで効果が不十分であれば、漢方薬や抗不安薬を用いることもあります。患者さんによってお薬の効果が異なるため、合うものを探していくことが必要となります。
内科や消化器内科を受診される患者さんの多くが機能性ディスペプシアであると言われています。まずは症状の原因となる疾患がないことを確認することが重要です。こういったご症状にお困りの方はお気軽にご相談いただければと存じます。